父親殺害の容疑で逮捕された女子大生、しかし、彼女自身にも動機がわからない。ミステリーですが、事件を追うのは探偵や刑事ではなく、臨床心理士。「家族」がテーマとなる社会派要素ありの物語です。
◆第159回直木賞受賞作◆
夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。
彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。
環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。
環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。
なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。
そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?
「家族」という名の迷宮を描く長編小説。
「動機はそちらで探してください」という言葉が気になっていたところ、文喫に置いてあったので、読んでみました。この言葉を意識して読み始めると、期待とかなり違う物語になります。僕は、思っていたのと違う感じで、楽しめました。
現在、本書が手もとになく、メモも残していないため、かなり手短な記事になります。
ミステリーはあまり馴染みがなく、探偵や刑事が事件の真相を解き明かすというイメージでしたが、本書はかなり違います。事件を追う主人公は、臨床心理士。容疑者の「家族」の問題に踏み込みます。
ネタバレしてしまうので、これ以上は書けないのですが、是枝裕和監督の『三度目の殺人』を思い出したのは気のせいでしょうか。これも、ネタバレ?
家族の問題ということで、社会派要素ありのミステリーだと思います。そういう意味では、天祢涼『希望が死んだ夜に』に通じるものがあります。主人公と彼女に協力する弁護士との過去も描かれており、恋愛要素もありますが、これは恋愛と呼べるものなのでしょうか。
タイトルが「ファーストラヴ」となっているわけですが、これの意味って、もしかして…という結末でした。
ハラハラドキドキはしないタイプのミステリーだと思います。ただ、ストーリーも登場人物の心理も、物語の結末も、すっきりわかりやすいと思います。それでいて、余韻があるような。救いがあるかどうかは、最後まで読んで確かめてみてください。
コメント
[…] […]