『思えば、孤独は美しい。』糸井重里

思えば、孤独は美しい。

装丁が美しく、手もとに置いておきたい本です。糸井重里の小さいことばシリーズ。その中でも、装丁が特に好きで、タイトルも良いですね。

糸井重里がつづった1年分のことばから、 心に残ることばを集めてつくる 「小さいことば」シリーズ11作目。 ときに哲学的で、ときに示唆に富み、 ときにユーモアにあふれた231のことばを収録。

糸井重里ファンの人には申し訳ないのですが、僕の中で、糸井重里という人物は、良いことを言っているようで何を言っているかわかならない人の代表のような人。『ボールのようなことば。』を持っているのですが、全部読んでいない気がします。今回は、元気がないところにおすすめされたので、手にとってみました。

良いことを言っているようで何を言っているかわかならない人の代表のような人、ではあるのですが、それでも糸井重里のことは好きで、当時の糸井重里事務所(現ほぼ日)で働きたいと思っていたほど。

嘘をつかない人、ポジショントークをしない人という印象を持っています。元コピーライターの肩書もありますが、そういう「刺さる」ことを言わない人。そう思っていたら、本書の中にもありました。

ある時期、言葉は「斬る」ものだった。
またある時期、言葉は「届く」ものとされた。
なんとなくいまの時期、言葉は「刺さる」ものらしい。
ぼくは、自分の言葉が読む人に「刺さる」のは
ちょっと嫌だなぁ。

小さいことばは、詩のようでもあり、ショートエッセイのようでもあり、つぶやきのようでもあり。わかるような、わからないような。いろんなことばがあって、どれか今の自分に合ったことばに出会えると良いのだと思います。その時々で、ひっかかることばは違うことでしょう。

「今の」僕が、ふたつだけピックアップしてみましょう。

とにかく、ひとりの味方がいる。
それは、じぶん自身だ。

なんだって、簡単にはできるもんじゃない。
そんなことは、だれだって知っている。
しかし、ひとりではじめられることがあって、
それなら、ひとりではじめられる。
たくさんの大仕事をしてきた人たちが、
だいたいは言うものだ。
最初は、じぶんひとりではじめましたとね。

大河の源に、小さな湧き水があるように、
ちょろちょろと流れ出すような「ひとり仕事」を、
はじめられるかどうかが、とても大きな問題だ。

「それを、じぶんがやる」ということ。
だれに説明するのも、けっこうむつかしい。
いちばんわかっていて、いちばん近くにいて、
無料でやりはじめてくれるのが、じぶんなのだ。
じぶんの、「微力という力」を頼りにできたら、
編みものの編み目が増えていくように、
なにかができていく快感が味わえるようになる。

ただね、味方になるのもじぶんだけれど、
敵になるのもじぶんなのだ。
「もうやめようよ、疲れるよ。逃げようよ」と、
いちばん強く巧みに誘ってくるのも、じぶんだ。

「できることをしよう」というのは、
いつごろからか、ぼく自身を励ますことばになった。

「できること」を、よく探して、
「できること」を、よくよく見つめて、
おそるおそるでいいから、やること。
「するべきこと」や「できないこと」を数えていたら、
どうしたって、悲観的にもなるし、
なにかをすることが虚しくなるだろう。
「できることをしよう」というのは、
愚かに思われるくらいちっぽけな者の結論かもしれない。
それで、いいじゃないか、と思えたのは、
たった数年前のことだった。

「できることをしよう」が、
ちいさいままで終わるとはかぎらない。
ちいさいはじまりが「できること」だったら、
当然、ちいさいことしかできないけれど、
それは、足し算されたりかけ算されたりして、
大きく育ってしまうことだってある。
ちいさくあることは目的でもないので、
「できることをしよう」は、
大きく育つことを禁じたりはしない。

本をパラパラとめくると、ページごとにフォーマットがばらばらです。書体も違えば、文字の大きさも、レイアウトも。だから、淡々としたことばなのですが、単調にはならないのですね。合間に(主に愛犬の)写真とコメントが入っています。

以前から感じていたのですが、糸井重里は写真が下手だ。ほぼ日で写真の特集などをやったりしているのですが、あいかわらず、糸井重里は写真が下手なんです。でも、良い写真なんです。とても良い写真。

ことばもそうかもしれませんね。上手いことばは(本当は使えるのに)使わないようにして、そのまま書いている。それが、とても良いことば。

まあ、ぼくの場合、多くは、ピンとこないのですが。その時々で、ひっかかってくることば。自分の置かれている状況で、変わってくるのだと思います。

ですから、頭から順番に読んでいくというだけでなく、適当に開いたページを読むという読み方も合いそうです。だから、電子書籍版がなくても構いません。むしろ、装丁も含めての価値なので、手もとに一冊。

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