『ニキの屈辱』山崎ナオコーラ

ニキの屈辱

本屋で見かけるたびに名前が気になっていた、山崎ナオコーラ。おすすめされた一冊を読みました。以前「人のセックスを笑うな」の映画を見ていたのですが、原作が山崎ナオコーラというのを最近知ったところです。

憧れの人気写真家ニキのアシスタントになったオレ。絶えず命令口調の傲慢な彼女に、オレは公私ともに振り回される。だがオレは一歳年下のニキとつきあうことになる。そして仕事の顔とは全く別の、恋に不器用なニキを知ることになって…格差恋愛に揺れる二人を描く、『人のセックスを笑うな』以来の恋愛小説。

読み始めると、若くして人気写真家となったニキの態度が、まあ酷くて、どうにも受け入れがたいキャラクターなのです。アシスタントになった加賀美も、なぜそれを我慢していられるのかと。

ところが、途中から二人の関係が変化するとともに、ニキの印象は変わっていきます。最初にドン引きしていた読者も、ニキを好意的に見るようになると思います。そうなったら、罠にはまったも同然。

僕はそのあたりまで、高速バスの中で読んでいました。バスは目的地に到着し、いったん本を閉じます。すると、あれ?この小説のタイトルって…

結論としては、途中でタイトルを思い出したとしても、支障はなかったと思います。ただ、そのまま一気に読んだ世界線も体験したかったな、と。

さて、写真家とアシスタントという設定なのですが、ラストまではこの設定は特に意味を持たないように思えます。そのまま別の職業でも成り立つような。ところが、ラストで、写真家であることの必要性が分かります。

最後まで読んだ人は「『それ』は写るのか?」という疑問を持つかもしれません。写真ファンとしての答えは「『それ』は写る」です。

僕が写真ファンだからこの小説をすすめられたわけですが、写真家がただの設定として消費されるのではなくて、写真がキーになるというのは、とても良かったですね。

もちろん、写真ファンでなくても理解できるように、文章で表現はされています。ただ、写真のことが分かっていると、言語化されていないところまで感じられるような気がしました。

大きな事件が起こるわけではない。それが、山崎ナオコーラの作風なのでしょうか。「人のセックスを笑うな」の映画を観た時に、あれ?これで終わり?と感じたのですが、今なら違う感想を持ちそうです。あらためて小説で読んでみようかなと思いました。他にも気になるタイトルはあるのですが。

本書は単行本も文庫本も表紙が同じで、写真は川島小鳥によるものです。

ほぼ日に、山崎ナオコーラのインタビューが載っているのを見つけたので、貼っておきます。

山崎ナオコーラさんインタビュー 胃薬のような言葉たち

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